初めて一人暮らしをする方は、部屋探しのためにいろいろと調べているかと思います。ところで、賃貸契約を結び引っ越しをするために、どれほどの初期費用がかかるのかご存知でしょうか。今回はその初期費用について詳しくご紹介します。あとで驚くことのないように、頭に入れていただければと思います。
初期費用の項目は何がある?
賃貸マンションを借りるためには、初期費用として必要なさまざまな項目があります。ひとつずつチェックして内容を確認しておきましょう。
礼金
賃貸マンションのオーナーに支払うお金です。家賃の何か月分という形で決まっています。一般的に1~2か月分となりますが、中にはゼロというケースもあります。礼金は退去時には戻ってこないお金です。
礼金がゼロとなる理由はいろいろとあります。まず賃借人がなかなか決まらない物件の場合、これ以上空室にしておきたくないという理由でゼロにすることがあります。あるいはオーナーが公的融資を利用して賃貸用マンションを建てた場合、礼金を受け取ってはいけない決まりとなっています。
また地域による商習慣の違いもあります。京都を除いた関西地域では、敷引きという制度が多くなります。これは礼金がゼロである代わりに、敷金に相当する費用が5~10か月分必要になるというものです。退去時にはそのうち数か月分を差し引いて戻る形になります。
敷金
賃貸マンションのオーナーに支払う一時金です。退去時の室内クリーニング費用に充てられ、残金があれば返却されます。金額は家賃の1~2か月分が一般的です。
未払いの家賃があれば徴収されるので返却されません。その上で、クリーニング費用などを別途請求されることになります。
退去時のクリーニングあるいは修復費用は、経年劣化とみなされる部分を対象としています。賃借人が故意に、あるいは不注意によって傷つけたりニオイをつけたりしてしまった部分に関しては請求対象になります。また慣習によって自然劣化であるか否かを問わずにクリーニング費用を一律請求する旨を契約書に記載するケースが多くなっています。その費用は敷金から充当されます。
敷金が少ないからといって、退去時の原状回復費用がかさむと別途請求費用が増えるので注意しましょう。
仲介手数料
賃貸マンションの紹介や契約時に立ち会う仲介役の不動産会社に支払う手数料です。一般的には家賃1か月分+手数料となります。
物件によってはこの仲介手数料を無料とする場合があります。空室期間が長いため、オーナーが賃借人の代わりに負担するというケースがあるからです。
前家賃
賃貸マンションの家賃は常に翌月分を前払いするため、契約時の諸費用にも前家賃が含まれます。さらに月の途中で入居する場合には、その月の家賃も日割計算により必要です。
火災保険料
賃貸住宅では火災保険に加入することを義務付けられています。その保険料として大体15,000円から20,000円が必要になります。
民法では、自分が借りている部屋からの出火による建物や周辺住人への損害に対しては、それが重大な過失でなければ賠償責任はないとしています。逆の立場では隣の部屋からの出火で自分の家財道具が消失しても、その弁償をさせることはできません。
しかし賃貸契約では、退去時には部屋を原状回復することとしています。そのため、出火により焼失した部屋を元に戻す義務はありますし、そのために必要な費用は支払わなければなりません。
そこで火災保険に加入し、万が一の場合に備えることになります。火災保険は自分の家財道具の損害を補償するものと、部屋を原状回復するために必要とする費用を補償するものの2つを含みます。
保証料
賃貸マンションを借りる際に、保証人をつけられないケースは多いでしょう。その場合に保証人の代わりに保証会社に加入する保証料を支払うことになります。
保証会社は賃借人の家賃を保証する会社のことで、滞納した家賃を立て替えて支払ってくれます。保証料は家賃の50%から100%程度となります。また賃貸マンションの契約を更新する際には、更新料が発生します。
保証会社はいろいろとありますが、仲介する不動産会社から指定されるのが一般的です。注意が必要なのは、信販系の保証会社に申請する場合、過去にクレジットカードなどの滞納記録がある人(いわゆるブラックリストに名前が載っている人)は審査が通らない可能性があることです。自己破産や任意整理なども含まれます。そのような人は信販系ではなく、ブラックリスト情報を共有していない独立系保証会社を利用するとよいでしょう。
鍵交換料
賃貸マンションは防犯上、賃借人が変わる際にドアの鍵を交換します。そのための費用が必要です。鍵交換費用は鍵の種類によって異なりますが、現在主流となっている複製が極めて困難なディンプルキーの場合、15,000円から20,000円ほどになります。
ディンプルキーの場合、個人で複製はできませんが、紛失した旨を伝えてスペアキーを受け取れば前の住人がスペアを持つことが可能になります。そのために鍵交換は必要という認識を持つとよいでしょう。
引っ越し費用
賃貸契約が無事完了して鍵の引き渡しを受けたら、引っ越しが必要になります。この引っ越し費用は距離や荷物の量、業者によって異なります。
荷物の量は何トントラックを使用するのかによって決まります。他に引っ越し業者の作業する人数や建物の階数、エレベーターの有無などによっても違います。さらに時期によっても単価が変わるので、初期費用の中では最もコントロールしやすい項目といえるでしょう。
ちなみに単身者の場合、荷物が少なく時期も繁忙期を避け、距離もさほど離れていなければ20,000円程度ですむ場合があります。逆に3月4月の繁忙期に別の都道府県へ引っ越すとなれば、荷物が多いと10万円ほどかかることもあります。
合計でいくらくらいかかる?
単身者が初めて賃貸マンションを借りる場合の初期費用がどれほどかかるのかを計算してみましょう。家賃を75,000円として敷金・礼金をそれぞれ1か月分とします。すると仲介手数料を加えて3か月分で、
75,000×3=225,000(円)
となります。次に月の半ばに引っ越すとなれば前家賃1か月と日割家賃半月分で、
75,000×1.5=112,500(円)
が必要になります。さらに火災保険料15,000円と保証料75,000円、鍵交換料20,000円とすれば合計は110,000円となります。以上を合計すると契約時には、
447,500円
を支払うことになります。ここに引っ越し費用を加算するので、目安としては500,000円ほどとみておくとよいかもしれません。
初期費用を抑えるコツ
こうしてみると、賃貸マンションを契約して引っ越すための初期費用はかなり必要になることがわかります。これから新社会人となる人にとっては、相当な出費となるでしょう。そこで少しでも初期費用を抑えるためのコツをご紹介します。
まず一番大きく出費を抑えることができるのは、引っ越し費用です。引っ越しシーズンを避けて閑散期に頼めば、かなり安くなります。また家電など新たに購入するものは、引っ越し先で調達すれば荷物を少なくできます。
引っ越しの時期をずらすことで、敷金と礼金も安くできる可能性があります。特に賃貸マンションのオーナーが仲介を1社にのみ依頼していれば、交渉することも可能です。せめて礼金を安くするか、あるいはゼロにしてもらうように頼んでみましょう。
火災保険を選べるのであれば、安いプランを選択するのもよいでしょう。その際には補償内容を確認し、自分の家財道具に対して明らかに過剰な補償内容とならない、安い保険料のものを検討するとよいでしょう。
まとめ
賃貸マンションに引っ越すためには相当のお金が必要になります。しかし工夫することで、その費用を大きく削減することも可能です。そのためには、それぞれの費用がどのような性質を持っているのか、よく理解しておくとよいでしょう。