ガスを使わないオール電化の賃貸物件がありますが、その住み心地はどのようなものなのでしょうか。そのメリットやデメリットをみてみると、物件選びもチェックすべき点がいろいろとあることがわかります。そこで今回はオール電化の特徴と住み心地や注意点などをご紹介します。
そもそもオール電化とは
賃貸物件で設備の欄に「オール電化」と記されているものがあります。これは室内の設備はガスを一切使用していないことを意味します。エアコンや床暖房はもちろんのこと、キッチンのコンロも給湯器もすべての設備で電気を使っているということです。具体的にどのような設備を使っているのでしょうか。
キッチンはIHクッキングヒーターか電気コンロを使用
キッチンのコンロといえばガスを思い浮かべると思いますが、オール電化の賃貸物件ではIHクッキングヒーターか電気コンロを使っています。IHとは「induction heating」のことですが、器具の内部にある磁力線に電流を流して調理器具そのものを発熱させる仕組みです。電気コンロは電熱線に電気を通して調理器具を加熱します。
IHクッキングヒーターは火を使わないので安全に使えるのが利点ですが、専用の鍋やフライパンが必要になります。その代わりにガスの火よりも熱効率が高いので、お湯を沸かす時間はガスコンロよりも早くなります。電気コンロとIHクッキングヒーターは出力自体にさほど違いはありませんが、IHクッキングヒーターのほうが熱効率が高いので電気代は安くなるでしょう。
使用できる調理器具はIHと電気コンロで違います。電気コンロは熱がきちんと伝わるものであれば何でも使用できますが、IHの場合には鉄やステンレスで底が平らになっている専用器具でなければ使えません。
お湯は電気温水器かエコキュートを使用
オール電化の賃貸物件では、お湯を沸かすためのガス給湯器のようなものはありません。お湯を使用する時に沸かすのではなく、前もって沸かしておいたお湯をタンクに貯めて保温しておく仕組みとなっています。
お湯を沸かす設備は電気温水器かエコキュートのどちらかとなりますが、築年数の古い物件の場合には多くが電気温水器になるでしょう。電気温水器もエコキュートも、ガスのように使用する時だけお湯を沸かすタイプもあるようですが、基本的には沸かしたお湯をタンクに貯めておく仕組みとなっています。
新しい設備であれば、夜間の電気代が安い時間帯にお湯を沸かしておいて、あとはタンク内のお湯を温めておくようになっています。キッチンや浴室でお湯を使えばタンク内のお湯が減り、無くなれば再び水を貯めて沸かします。電気代が安いのはエコキュートのほうなので、賃貸物件を探す時には頭に入れておくとよいでしょう。
また古いタイプの電気温水器は、夜間の時間帯でお湯を沸かすといった機能がついていない場合があります。賃貸物件を探す時には、オール電化であれば温水器がどのタイプなのかをしっかりと聞いておくことをおすすめします。
床暖房にはいくつもの種類がある
床暖房もオール電化は電気を使いますが、その仕組みは主に温水式と電気ヒーター式があります。温水式は電気温水器を使うものとエコキュートを使うものとに分かれます。そして電気ヒーター式の場合には、蓄熱式とPTCヒーター式、電熱線ヒーター式の3種類となっています。
電気代を考えると温水式が、さらにその温水式もエコキュートを使ったものがお得です。エコキュートを採用する賃貸マンションは比較的築年数が新しいものになるので、古い物件を探す時には電気代のランニングコストも考慮して選ぶとよいでしょう。
オール電化のメリット
ガスを使わないオール電化の大きなメリットは、火災などの心配がないことです。キッチンのコンロも火を燃焼しないので、火事になる危険がありませんし換気の必要もありません。また夏場にキッチンが暑くなるといった心配も不要です。
ガス給湯器を使わないので、ガス器具が古くなることによる不完全燃焼のような心配もありません。このように安全面におけるメリットが大きいことがオール電化の特徴です。
さらに温水器でお湯を沸かすのは、深夜の電気料金が安い時間帯なので、電気代もそれほどかからない点がメリットといえます。タンクにお湯を貯めておくので、断水になった時でもある程度は水を確保できる点もメリットといえるでしょう。
オール電化デメリット
安全面にメリットがあるオール電化ですが、停電になると室内の設備すべてが使えなくなるのがデメリットとなります。大規模のマンションであれば自家発電を設備していることで、停電でも使用できる場合があります。
また温水器についてですが、お風呂やシャワーで大量にお湯を使うとタンク内のお湯がなくなるので注意が必要です。また日中から夜にかけて大量にお湯を使ってしまうと、電気料金が安くない時間帯にお湯を沸かすことになるので、電気代が高くなってしまいます。
古い電気温水器を設置している物件の場合には、深夜にお湯を沸かすようなタイマー機能がない場合があるので、毎月の電気代はガスを併用するよりも高くなりがちです。賃貸物件を探す時には、温水器のタイプとタンクの容量を確認するようにしましょう。ほかにも古い物件の電気温水器は、内部に水が貯まったままの場合があります。そのまま使用すると不衛生なので、一度タンク内の水を入れ替えることができるかどうかも確認しておくとよいでしょう。
エコキュートを設置している物件は、その動作音にも注意が必要です。ヒートポンプの低周波音が気になることもあるので、物件を内覧する時にはほかの部屋の音などをチェックするとよいかもしれません。
オール電化はどのような設備であるかによって電気代がかなり違うので、賃貸物件を選ぶ時にはかなり注意が必要である点もデメリットといえるかもしれません。また温水器のタンク容量も、自分の生活スタイルを考慮してチェックすることをおすすめします。
実際にオール電化に住んだ感想
オール電化で気になるのは電気代ですが、これはお湯の使い方や家族構成によってかなり感想は違います。たとえば単身者でもお風呂に毎日入るかどうか、あるいはシャワーだけで済ませるのかによって、電気代は結構違うようです。
単身者用の賃貸物件でエコキュートを採用している場合、タンク容量は150リットルから200リットル程度になるようです。タンク容量の目安は370リットルで180リットルの浴槽にお湯を1回溜めて、シャワーで数回使いキッチンシンクなどの洗い物をすればほぼ使い切るといった感じです。単身者でも毎日湯船に浸かりたいという人にとっては、200リットルでは物足りないかもしれません。
ランニングコストに関しても、大量にお湯を使う人はタンクの容量が大きな物件でなければ、電気代の高い時間帯でお湯を沸かしてしまうので電気代が高くなるという声があります。使い勝手に関してはおおむね評価は良いようです。特に冬場はすぐに温かいお湯が出るので便利という声もあります。火を使わないので小さなお子さんがいる人は安心できるようですし、寒い冬に空気を入れ替える必要がない点も高評価のようです。
まとめ
オール電化がメリットになるかデメリットになるかは、温水器の性能とお湯の使い方に左右されるようです。お湯を大量に使う人にとっては、その残量を気にしながら使用することになります。そのような心配がない人にとっては深夜料金でお湯を沸かせるので、光熱費を安く済ませることも可能です。オール電化の賃貸物件を探す時には、自分の生活スタイルと設備をよくチェックして選ぶとよいでしょう。