4月17日、ついに名駅の複合ビル「JRゲートタワー」が全面開業となりました。高島屋ゲートタワーモールの開店を前に、1300人が行列を作るほどの人気を集めましたが、今回は名駅エリアの発展と名古屋全体のこれからについて取り上げてみます。
JRゲートタワーの全貌
すでに完成しているJRセントラルタワーズと隣接するJRゲートタワーは、1Fや12Fと13Fのレストラン街、15Fのスカイストリートから連絡通路がつながっています。さらにJR線をはじめ名鉄や近鉄・地下鉄の駅に直結することで、スムーズに乗り換えができるようになっています。
フロア構成はB1Fから8Fがタカシマヤゲートタワーモール、9Fから11Fには商業施設が入っています。12Fと13Fはレストイラン街となり、18Fから24Fはホテルといった形になります。26Fから44Fはオフィスフロアとなります。
タカシマヤゲートタワーモールには150ほどのショップが入り、東海地区では初出店となるお店もあります。さらにビックカメラやユニクロ、ジーユーも出店しています。
レストラン街は、毎日通っても飽きない、をコンセプトに37店舗が終結しています。東京の人気店と名古屋や岐阜などの有名店など、約9割が東海地方での初出店となっています。さらにタワーズのレストラン街と連結すると、76店舗という日本最大級のレストランフロアとなります。
名古屋JRゲートタワーホテルは350室を確保した名古屋駅直結の好立地となります。15Fにフロントとロビー、そしてレストラン「THE GATEHOUSE」があります。このレストランは世界一の朝食として有名なシドニーの「bills」などを手がけた会社が運営しています。
他にもフィットネスクラブや保育施設も完備するなど、あらゆる世帯が利用できる施設が揃っています。
その他開業しているビルについて
名駅周辺の再開発の皮切りになったのは、1999年に開業した「JRセントラルタワーズ」です。高さ245mのオフィス棟と226mのホテル棟の2棟から構成されるもので、低層部にはジェイアール名古屋タカシマヤが入っています。今回開業したタカシマヤゲートタワーモールとは一部の階でつながっています。その地下には長い歴史を誇る地下街のゲートウォークがあります。テルミナ地下街という名前でしたが、2015年に名称が変更されています。
さらに2015年、JRゲートタワーの隣に位置する場所に「JPタワー名古屋」が竣工しています。そして2016年には地下1Fから地上3Fのフロアにおいて商業施設のKITTE名古屋が開業しています。
続いて2016年、旧ビルの老朽化により建て替えられた「大名古屋ビルヂング」が開業しています。地下1Fから5Fの商業施設と、7Fから16Fにかけてのショールームやクリニックモールなどから構成されています。商業施設エリアにはショップやレストランなど74店が集まっています。
同じ年に駅の東側には、シネコンなどが入る「シンフォニー豊田ビル」が開業、隣接するミッドランドスクエアや名古屋クロスコートタワー、センチュリー豊田ビルの3つと地下で結ばれるという構造となります。
名駅エリアの開発状況について
名古屋駅は複数の路線が乗り入れるものの、その乗り換えのしにくさが課題となっていました。とはいえ、その解消のための具体的な方策が決まらない中で、リニア開業の話がまとまりました。JR東海のルート案公表を契機に、再開発が一気に進むことになったわけです。これで名古屋駅への利用客が増えることにより、企業の誘致も進むことが期待できます。そのために多くの高層ビルが建設され、オフィスに商業施設が多数開業されているわけです。
実際に、トヨタのミッドランドスクエアが2006年に開業すると、トヨタ自動車はもちろんのこと、JXや全日空、毎日新聞などが名古屋本社を同ビルに移転させています。ソフトバンク・テクノロジーも2016年に名古屋オフィスをJPタワー名古屋に移転しています。
今後はリニアの開業により、東京からの利便性向上による企業誘致がいかに進むかが課題と言えます。名古屋は元々、東海地区では唯一と言える都市部であるために、ライバルと呼べる存在がありません。上記の企業の移転も、あくまでも名古屋市内での移動に過ぎません。いかに他の都市から、さらに海外から誘致できるかが鍵と言えます。
また、これまではオフィスは名駅、商業施設は栄との棲み分けがありましたが、名駅エリアの商業施設開業により栄エリアの対応が迫られる形となっています。名古屋全体の活性化を考えれば、名駅エリアと共に栄エリアの開発も求められることになります。
栄エリアとの対比
名古屋ではよく、名駅エリアと栄エリアが比較されます。これまでは、歴史的にも長く経済的にも発展していた栄エリアが名古屋の中心でしたが、JRセントラルタワーズが開業したことをきっかけに、名駅エリアの躍進が目覚ましいものとなっています。名古屋の主要企業がその機能を名古屋駅周辺に移転する傾向は今後も続くと考えられます。けれども、名古屋にとって望ましいのは、どちらかの一極に傾くことではなく、両者の良い面を残して発展していくことではないでしょうか。
その点は栄エリアも考慮しているようです。人の流れが名駅エリアに傾けば、栄エリアの衰退という危惧もあります。つまり、栄エリアも何らかの再開発をせざるを得ない状況にあると言えます。けれども名古屋駅と同様の高層ビル化では、栄らしさを保つことはできないと捉えています。栄エリアの良さは、文化と歴史、そして計画的に作られてきた街並みです。それを壊すことなく発展させることが課題と考えられています。
今後は名駅エリアと栄エリアとの共存を目指す発展が望ましいと言えます。目的はあくまでも名古屋全体の発展であって、名駅エリアも栄エリアも名古屋ナンバーワンを目指すわけではないということです。そのために、名駅エリアの役割というものを踏まえての再開発が求められるというわけです。
名駅エリアの今後について
名鉄は名古屋駅周辺の新たな再開発計画を発表しました。高さが160mから180m、南北の長さが実に400mものビルの開発です。商業施設やオフィス、ホテルが入居することになります。名称はまだ決まっていませんが、2022年に工事着工し、2027年のリニア開業にタイミングを合わせて完成を目指すとのことです。テナントとしては、オフィスにホテル、商業施設に加えて住居も入る予定です。
太閤通をまたぐ形で建設される構造に驚きの声も上がりましたが、2年前の構想の段階では道路の上をペデストリアンデッキと商業施設でつなぐものだったようです。この時点では再開発の対象は5つのビルでしたが、南に位置する日本生命ビルも一体となって開発することに決まったようです。これが太閤通をまたぐ形での開発となった経緯です。そしてその先のささしまライブ24への動線をつなぐという目論見もあるようです。ここにはオフィスやホテル、シネコンや大学などがあります。けれども名古屋駅から徒歩10分と少し遠いイメージは否めません。それを今回の再開発によって、人の波を作り出そうというわけです。
また、より多くの企業テナントを誘致したいとの思いから、やはり駅から離れた日本生命ビルへの動線を確保して、テナントが入りやすくするという狙いもあります。
もちろん、地下の名古屋駅の改良も視野に入れています。特に名鉄名古屋駅はホーム3面の2線という構造に対して、1線には10を超える行き先の電車が入ります。この分かりにくさを解消するために、駅の広さを2倍にする計画があります。
終わりに
このように名駅エリアの再開発は、リニア開業計画が具体的になったことで、名古屋駅の整備を主として進められています。テナントの誘致と人の流れを呼び込むことで、企業の移転も目指すことになります。働く環境としても魅力をアピールできれば、さらに人口の増加も期待できます。