賃貸物件でトラブルとなる原因の多くは、音に関することです。特に上階や左右の部屋からの音に悩まされる人は多くいます。
そこで今回は、賃貸物件における防音対策についてまとめてみます。
1 防音性能に優れた構造を選ぶ
賃貸物件は構造によって防音性能は違います。物件選びの時にどのような構造であるかを確認すれば、ある程度は音に関するトラブルを回避できます。
防音性に優れた構造は、鉄筋コンクリート・鉄骨・木造の順になります。
コンクリートは木材よりもトラブルの原因となる空気音(テレビの音や話し声など)と衝撃音(歩く音や椅子を引く音など)の遮音性が高いものです、また壁や床のコンクリートは、厚くなるほど遮音性が高まります。
空気音を遮断するために防音性能があるグラスウールや石膏ボードを使う物件もありますが、これらは衝撃音には弱いものです。基本的にはコンクリート厚のある鉄筋コンクリートの構造体を選ぶことをおすすめします。
同じ鉄筋コンクリートでも、賃貸用のマンションと分譲用のマンションでは防音性が違います。賃貸用のマンションは建築コストを抑えるために、壁の厚みを抑える傾向があるからです。対して分譲用マンションは快適性を優先するので、割とコンクリート壁は厚くなっています。
また躯体の材質だけではなく、部屋の間取りによっても防音性は変わります。たとえば隣の部屋との間にクローゼがあれば、隣から直接的には音が伝わらないので静かに感じます。物件選びでは間取り図をチェックしますが、その時には隣の間取りもどうなっているのかを確認しておきましょう。
2 音を出す部屋の位置
同じ建物でも、部屋の位置によって音に悩まされるか否かが違います。たとえば最上階なら、上階がないので足音のような打撃音に悩まされる可能性は低くなります。あるいは1階も、下の部屋からの音に悩まされることはありません。声などの空気音は階下からも伝わってきます。
また角部屋であれば、片方の壁は隣の部屋とつながっていないので音のトラブルも少なくなるでしょう。問題なのはそれ以外の部屋、つまり上下左右をほかの部屋に囲まれているところです。
あるいはたとえ角部屋であっても、エレベーターが隣にある部屋はエレベーターの動作音や振動が伝わりやすいので、避けたほうがよいでしょう。
3 自分たちでできる防音対策
賃貸物件は条件の良い部屋から先に決まりやすいものです。また最上階や角部屋は家賃も高いですし、住みたくても住めないという方も多いでしょう。そこで自分でできる防音対策をご紹介します。
3-1 遮音シート
賃貸物件は自由に内装工事はできませんし、防音工事にお金をかけることもできないでしょう。そこで少しでも気になる音を遮断できる遮音シートを壁に貼ってみたらいかがでしょうか。
遮音シートはネットでも購入できますし、女性でも簡単に壁に貼ることができます。また剥がせる接着剤を使っていれば、壁に傷をつけることもありません。
薄い遮音シートでは効果が薄いという場合には、突っ張り棒を床から天井にかけて置き、2本の突っ張り棒で厚いタイプの遮音シートを挟むように壁につけるという方法もあります。
3-2 ラグやカーペット
防音対策は周囲からの音を遮断するためだけではありません。足音やドアを閉める音などの生活音が気になるということは、自分も周囲に迷惑をかけている可能性があります。
そこで自室から音が漏れないように対策を考えましょう。まず床にラグやカーペットを敷くことで、階下への音を軽減することができます。
ラグやカーペットを選ぶ時は、遮音性が高いタイプを選びましょう。ラグやカーペットの毛足は、ループパイルとカットパイルという2種類があります。ループパイルは毛足がループ状になっているもので、カットパイルは毛足がカットされたものです。
どちらが遮音性が高いかというと、カットパイルの方です。厚みがあり目が詰まっているタイプのラグやカーペットの方が、階下への音が小さくなります。
3-3 ジョイントマット
ジョイントマットとは正方形の形をした床に敷くマットのことです。ジョイントマット同士をつなげるこどができるように、四方に凸凹があるのが特徴です。
この商品を使う目的は、階下への衝撃音を軽減することです。小さな子どもがいれば、どうしても走り回るので階下へ衝撃音が伝わります。マンションでの音のトラブルの原因として多いのが、この子どもの足音です。
さらにジョイントマットには、子どもが転んだ時に怪我をしにくくなるという効果もあります。
材質としてはコルクとEVA樹脂があり、それぞれ特徴が異なります。コルクは自然な肌触りなので、床に敷いて上を歩いても違和感がありません。通気性も良く保温性も高いので、冬場には断熱にも役立ちます。ただし、コルク特有の臭いが気になる人もいますし、歩いているうちにクズが出てきます。
EVA樹脂の場合には、クッション性に優れているメリットがあります。デメリットとしては熱に弱いことがあるので、ストーブなどを使う場合には注意が必要です。
ともに厚みがあるほど、防音性能は高まります。ただし軽減できるのは、物が落ちる時に発生する衝撃音です。テレビの音や話し声といった空気音に対しては防音性はあまり期待できません。同様に、階下からの音を軽減する目的で購入しても、さほど効果はないので注意しましょう。
ジョイントマットの利点は、必要な部分にだけ敷くことができることです。コスト的にはそれほど負担がかからないので、手軽にできる防音対策と言えるでしょう。
3-4 スリッパ
小さな子どもがいればカーペットやジョイントマットが役立ちますが、そうでなければスリッパひとつで歩く音はかなり軽減できます。
歩き方は人それぞれ違いますが、かかとから足を踏み下ろす人の場合には階下に大きな衝撃音が伝わります。本人は意識していなくても、階下の人にはかなり気になる場合があります。
そこで、フローリングの部屋を歩く時にはクッション性の高いスリッパを履くようにしましょう。しかし、かかとから足を下ろすのではなく、すり足のように歩く人の場合にはスリッパを引きずる音が階下に伝わります。その点には注意が必要です。
4 防音性能が高いカーテン
音は壁や床、天井だけでなく窓から入るケースもあります。ほかの部屋の住人が窓を開けて、大音量でテレビをつけていれば、たとえすぐ隣や上下の部屋でなくても音が窓から入り込んできます。
そのような場合には、防音性が高いカーテンをつけるとよいでしょう。ただし、防音効果はそれほど期待できません。少しでも音を遮るために、隙間が開かないようにサイズには注意しましょう。床にもしっかりと届く長さが必要ですし、両開きよりも真ん中に隙間ができない1枚カーテンのほうがおすすめです。
5 隣や上の階の人がうるさい時は管理会社に相談
自分で取りうる防音対策をしても、どうしても隣や上階の音が気になるという場合もあるでしょう。そのような時は、直接住人に注意するのではなく、管理会社に相談しましょう。特に女性の場合には、どんな人が住んでいるのかわからないので注意が必要です。
また直接話をすると、お互いに感情的になって険悪な雰囲気になることもあります。場合によっては、静かにして欲しいのにかえってうるさくなってしまうということもあります。
マンションのような集合住宅は、住む人がお互いに節度をもって生活することが必要です。その旨を管理会社を通して伝えるようにしましょう。逆に、ちょっとした物音に対して何度も注意してもらうようなことはしないということも大事です。
まとめ
音に関するトラブルは解決が難しいケースが多いものです。一番の解決策は、騒音の可能性が低い物件を選ぶということになります。そのためにも、建物の構造や間取りなどに関する知識を得ておくことをおすすめします。