眺望が魅力とされるタワーマンションは他にも、充実した設備やセキュリティの高さ、ホテルのようなコンシェルジュサービスを利用できるなど多くの魅力があります。その反面、実際に住んでみないとわからないデメリットもあるものです。そこで、タワーマンションの居住を検討している方の役に立つような注意点をいくつかご紹介します。
事前にデメリットを知っていれば入居するときに「しまった!」を防げるはずです。
◇エレベーターがなかなか来ない
まず多くの人が実感するのがエレベーターにおける不便さではないでしょうか。タワーマンションは戸数が多いので、朝は通勤のために外出する人が一斉にエレベーターに乗ります。その結果、下層階の人はなかなかエレベーターに乗れないという物件もあります。あるいは管理費の不足により、稼働するエレベーターを減らす物件もあるようです。
もちろんマンションの規模に応じてエレベーターは何基も設置されますが、それでも地上に降りるまでしばらく待たされることもあるでしょう。対策としては物件選びの際に、その建物のエレベーターがどのような運行スケジュールを組んでいるのかをチェックするとよいかもしれません。また日中には停止しているエレベーターがないかどうかもチェックしましょう。特に分譲タイプのタワーマンションはオーナーの管理費不払いにより、電気代を節約している物件があります。
◇地震の揺れがとても大きい
タワーマンションは地震対策に制振や免振という構造を取り入れています。揺れに耐えるのではなく、ある程度揺れることでそのエネルギーを逃がすというシステムです。そのためにちょっとした地震でも揺れますし、しかもそれが長く続きます。いわゆる長周期振動によって、長い間揺れ続くわけです。
その結果、地震が収まり建物の揺れが停止しても、まだ揺れているような感覚が抜けないという人もいます。あるいは常に建物が揺れているという感覚を覚える人も少なくないようです。
◇隣の部屋の音が気になる
タワーマンションに住んでみると、となりの住戸の音が気になるという意見も聞かれます。ただしまったく聞こえないという意見もありますし、どれが本当のところなのか疑問に思われる方も多いでしょう。
音が漏れる原因はタワーマンションの重量を軽くするために、戸境にコンクリートではなく石膏ボードを使っているからです。超高層の高級ホテルでも採用される石膏ボードですが、防音性に難があることが指摘されています。高級ホテルでも、となりの部屋の音がよく聞こえるというケースは少なくありません。
タワーマンションで採用される戸境の壁は乾式壁と呼ばれるものです。石膏ボードと石膏ボードの間にグラスウールを使い、防音性と断熱性を確保する構造となります。一般的にタワーマンションの乾式壁は136mmとなりますが、これは200mmのコンクリートに相当すると言われます。一般的に通常のマンションの戸境はコンクリート圧180mm~200mmとなっています。つまりタワーマンションの乾式壁は、数字のうえでは一般のマンションと防音性はさほど変わらないことになります。
同じ136mmの乾式壁でも、音が気にならないタワーマンションも確かに存在します。これは下地から伝わる固体音の遮断が難しいことから、高品質な石膏ボードを使用していることが理由です。分譲マンションであれば販売価格に転嫁できるので、そのような物件を借りることで音に悩まされる可能性を回避できると言えます。賃貸専用のタワーマンションはそこまで高品質な材質を使わない物件もあるので注意が必要です。
◇外に出かけるのが面倒
高層階に住んでいると、エレベーターで下に降りるのが面倒になるようです。敷地から外に出るまで時間がかかるので、買い物などもできる限り回数を減らすようになります。また郵便受けに郵便物を取りに行ったりゴミ出しをしたりと、何かと下に降りる回数も増えがちです。それらをまとめて行うために、外に出る回数も必然的に減ってしまうというわけです。
これもエレベーターの待ち時間が長いことが影響しています。エレベーターは決まった階数だけに止まるものがあるので、その一番上の階に住むことで降りる時は待たされずに済むようになります。
◇気圧の変化が体調不良につながることがある
たとえば50階建てのタワーマンションの場合、最上階は地上から200メートルほどの高さになります。気圧は10メートル上がるごとに1hpa(ヘクトパスカル)下がると言われますが、50階では20hps下がることになります。
台風が近づいたり梅雨の時期になると体調を崩す人がいますが、これは気圧が変化することが原因です。1日に10hps以上気圧が変化すると、いわゆる気象病が発症しやすいとの論文もあります。
タワーマンションで特に注意が必要なのは、エレベーターで上下に移動する際の気圧の変化です。腰痛を抱えている人は、この変化によって痛みを感じるというケースもあります。
ただしこのような気圧の変化による体調不良は、全ての人に当てはまるわけではありません。まったく影響を受けない人もいますので、最上階で快適に生活している人ももちろんいます。また気圧の変化に影響を受けやすい人でも、低層階を選ぶことで対処することができます。
◇子育てに影響がある
タワーマンションの高層階に住むと、子育てに悪影響を及ぼすという意見を聞きます。その理由はいろいろとありますが、最も大きな要因は”音”にあるようです
音といってもここでは隣住戸の騒音の話ではなく、自然界の音が聞こえないことを意味します。地上から遠く離れた高層階では、風でさざめく木の葉の音や鳥のさえずり、季節の虫の声が聞こえません。これが幼少期の子供に影響を及ぼすということです。
幼少期にはいろんな音を聞かせることで、子供の感性が育まれると言われます。三重苦のヘレンケラーが奇跡を起こすことができた理由は、生後2ヶ月の間はかろうじて音を聞くことができたためと言われています。
ただしこれも、先述した外に出るのが面倒であることと関係があるようです。子供をきちんと外に連れ出して、いろんな音を聞かせてあげることで対処することができます。必ずしも高層階に住むことが問題なのではなく、その生活の仕方が大事ということです。
◇風が強い
タワーマンションではベランダに物を干すことを禁止する物件が少なくありません。これは高層階での風の強さが原因です。たとえばベランダに干していた布団が風で飛ばされてしまうと、落下により事故につながる危険性があります。
さらに強風によって窓を開けることができないという不便な点もあります。もちろん24時間換気をしていますが、やはり窓を開けて外の空気を入れることで気分も変わります。それができないのはストレスと感じる人もいるでしょう。
そして建物自体も風を受けて揺れます。地震への対策として制震構造や免振構造を取り入れる物件もありますが、それゆえに強風で揺れるようにもなります。制振対策をとる物件もありますが、人によっては船酔いのような感覚を覚える場合もあるでしょう。
◇管理費が高い
タワーマンションの場合、管理費を高く設定しているところが多いようです。一般的なマンションと比べると規模が大きいために、その維持や修繕にお金がかかるからです。共有施設やコンシェルジュなどの費用も、管理費で賄うことになります。
賃貸マンションの場合、実際には家賃と管理費の振り分けはオーナーが決めることができます。つまり管理費を安くすることもできますが、その場合には家賃が高く設定されます。つまり支払う総額としては変わらないというわけです。けれども家賃の割合が高くなると仲介手数料や更新料の負担が増えます。物件選びの際は管理費の高さのみに惑わされず、支払い総額がいくらになるのかをチェックしましょう。
◇まとめ
タワーマンションにはこのように、デメリットとなる要素がいろいろとあることがわかります。けれどもそのうちの多くは対策を立てることができますし、住み方を工夫したり物件選びに注意すれば回避できることもあります。事前に心得ておけば、快適なタワーマンション生活を送ることもできるでしょう。